和室の基礎知識 06〜10(床柱について / 床框について / 他)

06-1 床柱について

 床柱は床の間を構成する銘木の一つです。格式高い床の間には、桧の正角大面取りの柱を用いますが、現代の一般住宅では黒檀・紫檀・鉄刀木・花林・槐・磨丸太・絞丸太・杉面皮などが用いられています。 数寄屋造りの様な格式や決まり事に囚われない砕けた感じの床の間では、香節・椿・百日紅・竹など雑木、変木が用いられています。

 床柱となる樹種はその他たくさんありますが、要は室内の他の材料や意匠と調和したものを使えばどのような銘木でも床柱となります。 

     
無垢正角大面取り  集成芯突板貼
(貼角面取り)
主に黒檀・紫檀・花林など
 集成芯突板貼
(貼甲丸)
主に黒檀・紫檀・花林など
     
     
無垢面皮柱
主に杉・桧など 
丸太(太径)
主に杉絞丸太・杉磨丸太など 
丸太(細径)
主に香節・百日紅など 



06-2 床柱について

 丸太の根元に近い切り口を元口、樹の先端に近い切り口を末口と言います。人が立った時の目線の位置を目通りと言います。元口と末口では樹の太さは違います。(元口>末口)。

 受注の際、例えば「絞りの4寸」と言われたら、「目通り4寸でいいですか?」と聞いてみて下さい。「それでいい」場合や「末口4寸にしてくれ」などの返事が返ってくると思います。 このような会話を交わす事で「杉絞丸太 3000×末口120φ」のような注文が取れます。(角柱でも元口、末口は存在しますが受注の際には元から末まで同じ寸法の為、上記のような会話は要りません。





07-1 床框について

 床の間を座敷面から柱一本分程度高くして畳床や板床とする場合、その端を隠す為に用いる材を床框と言います。 格式高い床の間には桧材に黒漆塗を施した床框を使いますが、現代の一般住宅では漆の代用品としてカシュー塗の面皮框や、欅・脂松・黒檀・紫檀・鉄刀木・花林・黒柿などが用いられています。

 数寄屋造りの様な格式や決まり事に囚われない砕けた感じの床の間では杉磨き丸太・竹・栗・その他各種雑木が用いられています。
   無垢床框

無垢・突板貼床框
貼りの場合主にケヤキ・ヤニ松・黒檀など

面皮框 主に蝋色(黒)・潤色(栗色)など

太鼓落し 主に磨丸太など



07-2 床框について

 床框を横たえた状態での上面を上場(上端)と言います。面を挟んだ立ち上がりの部分を見付けと言います。 一般的に上場は柾目、見付けは板目になるような木取りをします。 面の部分に樹の肌皮を残して作った框を面皮框と言います。
 



08-1 落掛について

 床の間上部の小壁を受け止める横木を落掛(落し掛け)と言います。 材の選種は床柱や床框との組合せの中で決められます。現代の一般住宅では桐・杉・黒檀・紫檀・桧・松などが用いられています。

 数寄屋造りの様な格式や決まり事に囚われない砕けた感じの床の間では杉磨き丸太・皮付きの小丸太・竹・栗などが用いられています。 和室に軽妙な感覚を持たせたい場合には、見付けを極力薄くした刀刃(八掛け)を用いります。
  無垢落掛

無垢・突板貼落掛 貼の場合主に桐・杉・黒檀・紫檀など

刀刃 主に杉



08-2 落掛について

 落掛を横たえた状態での下面を下場(下端)と言います。正面立ち上がり部分を見付けと言います。 一般的に下場は板目、見付けは柾目になるような木取りをします。落掛は床框と違い、面取りはしません。
   



09-1 床板について

 床の間に使用する板材には床板や地板、地袋板などがあります。現在、一般的な住宅では無垢板は高価な為、ケヤキやヤニ松などの突板貼りが多く用いられています。(以下は突板貼りの説明です)

 床框と併用して用いる板材を床板と言います。表面のみ突板が貼られています。畳と面一になる場所に用いる板材を地板と言います。表面と前見付に突板が貼られています。

 出窓カウンターや開き戸の天板に用いる板材を甲板と言います。表面、前見付、見返しに突板が貼られています。甲板の見返し部分に鴨居溝を切った板材を地袋板と言います。

 その他、床框と床板が一体型となった段床板や、見返し部分に蹴込溝を切った蹴込地板などがあります。
 



09-2 床板について

 突板貼の床板と地板は貼り方が違う為使用する際明確な違いがありますが、無垢床板は地板として使用することもできます。それ故か現場監督や大工さんは床板と地板という名称を混同する傾向があるので、受注の際下記のような注意が必要です。

     
床框と併用して用いるのは床板です。   床框と併用して地板を使用することはありません。
     
     
 畳と隣接する場所に用いるのは地板です   畳と隣接する場所に床板を用いると芯材が見える恐れがあります 。



10 その他床材について

床天井
 床の間内部の天井を床天井と言います。杉や桧の板を用いたり(一枚板の場合、鏡天井と言います)、竿縁天井、敷目板張り天井、網代天井など様々な種類があります。予算の少ない住宅では一般的に杉柾網代が多く用いられています。
 網代とは杉柾の単板や枌板、竹皮(竹身)を斜め又は縦横に編んだもので数寄屋建築や茶室の天井材としても多く用いられています。


無双
 掛け軸を吊るす釘がついた横木を無双四分一(無双)と言います。幅の違う掛け軸をバランス良く二幅、三幅と掛けられるように釘が左右に動くようになっています。一般的に杉や桧の無双が用いられています。



雑巾摺り
 地板(その他部材)と壁との見切り部分に取り付ける部材を雑巾摺りと言います。一般的に地板や床板と同材の雑巾摺りを使います。


框束
 床框が柱のない壁に納まり良く取り付くように用いる部材を框束と言います。床框が書院の腰壁と交じり合うの場所では立足束と言います。一般的に床框と同材、立足束の場合は座敷造作材と同材、数寄屋風の床の間の場合は殆ど使いません。



 黒檀(こくたん)紫檀(したん)鉄刀木(たがやさん)花林(かりん)槐(えんじゅ)磨丸太(みがきまるた)絞丸太(しぼりまるた)香節(こうぶし)椿(つばき)百日紅(さるすべり)欅(けやき)脂松(やにまつ)上場(うわば)刀刃(はっかけ)網代(あじろ) 無双四分一(むそうしぶいち)立足束(たたらづか)


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